不登校は病気か?

 不登校状態になっている子どもは体調不良や睡眠の乱れ、漠然とした不安感などを訴えることが多いものです。体調不良の代表的な症状は「頭痛」「腹痛」「吐き気」「めまい」「寝つけない」などです。そういう状態が続く場合、たいてい保護者がまず病院に連れていくことになります。検査によって身体的なものが主原因の病気であることがはっきりすることもありますので、子どもが身体症状を訴える場合には、まず病院でちゃんとした検査を受けることをお勧めしたいと思います。

 検査で身体的なものについて異常が発見されない場合、病院からの診断でよく目にするのは「自律神経失調」「過敏性腸症候群」「適応障害」「不安障害」「睡眠障害」「抑うつ状態」などです。 たまに「うつ病」や「統合失調症」との診断がなされることもありますが、それらの診断は不登校の子どもの全体からするとそれほど多くの割合にはならないだろうと思います。

 これらの状態についてよくある誤解の一つは「原因が心理的なものなのだから本人の気持の持ちようが問題。気持ちを強く持てば大丈夫」と捉えられることで す。子ども自身が「自分の気持ちが弱いから病気になった」と考えていることも多いものです。実際には、そういう考え方によって周囲と本人自身が逆に子ども を追い込んでしまった結果、自律神経失調などの状態に陥ってしまっているケースが大半です。「気持ちの持ち方」という面から言えば、ひたすら自分自身を追 い込んでしまう「思考パターン」や「周りからのプレッシャー」の方が問題です。その場合には「本人の気持ちが楽になるにはどうすればいいのか」という発想 で周りが考えてあげる必要があります。

 では、不登校は病気なのでしょうか?診断名がついているということは確かに「医学的には病気」なわけです。普通に考えると「病気ならば病院で治療するとよい」ということになります。病院での治療は基本的には「投薬」です。では投薬で不登校は治るのでしょうか?

  実はこの部分が不登校問題の非常に難しい面になっています。「うつ病」や「統合失調」の確定診断が下りている場合には、学校に登校して普通の学校生活を送 ることはまず難しい状態にあると考えていいと思います。それだけ重症度が高いということです。治療も現在のところ「投薬」と「休養もしくは入院」を中心と して行われます。

 と ころが、不登校の子どもの大半は「本人が無理をすれば・短期間なら」何とか登校できるレベルの状態にあります。つまり、あえて言えば「半健康・半病気」と でもいう境界領域にあると言えるのではないでしょうか。子どもは日常生活を送りながら回復を目指すことになります。つまり、我々大人が不登校の子どもに対 して対応すべき領域となるのは「医療」と「教育」の境界領域なのです。したがって、本来なら医療関係者と教育関係者が協力してチームで対応するのが理想だ と思います。つまり、必要に応じて投薬やカウンセリングを行いながら、学校や家庭で生活環境の改善を行う、などの取り組みということになります。最近はス クールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置なども進み、以前よりも若干変化してはいますが、残念ながら医療関係者と教育関係者がチームで対応 するという体制にはまだまだなっていません。将来的にはそういう視点も取り入れた取り組みも必要だと思います。

 こ の現実を踏まえ、教育関係者や保護者が不登校問題に具体的に対応するためには、ある程度の医学的知識を習得しておくことが必要ということになると思いま す。最低でも、病院で何らかの診断がなされた場合「それがどういう状態を意味しているのか」ということぐらいは自ら調べて把握する必要があると思います。 必ずしも専門的な知識がそれほど必要なわけではありません。家庭向けの医学書程度の知識でも十分かと思います。ぜひご自分で調べられることをお勧めしま す。

  また、最近気になることは、自律神経失調などの診断名が現場の教師の目にもちょくちょく触れるようになったことで、「病気と診断されているが、実はそれほ ど大した状態ではないのではないか」「原因がよくわからない病気にとりあえずつけられているのではないか」という認識が教育関係者の一部にみられることで す。風邪でも、無理をしてしまうと肺炎など重篤な病気に悪化してしまいます。残念ながら思いこみによって子どもに無理をさせ、かえって状態を悪化させる例 も時々見られます。教育関係者にはぜひある程度の医学知識は身につけられるよう要望したいと思います。

 2010.11.1(豊永)

 

真言寺不登校支援ネットワーク
http://shien.shingonji.net/article.php/20101101140518120